【書評】正欲 朝井リョウ著 ネタバレ含む

本屋や古本屋へ訪れるのが大好きです。

本屋へ行くと、「イン・ザ・メガチャージ」の本がよく目に付き、一度、読んでみようと思っていたのですが、それなら、まず著者である朝井リョウ先生の他の作品から読んでみて、それから考えようと思い手にしたのが「正欲」。

正欲の存在は知っていたのですが、タイトルからあまり興味を持てない作品の可能性が高く、これまで避けていましたが、上記の理由で「食べず嫌いは駄目」と思い、手にしてみました。

今回は、そんな「正欲」の感想です。

ネタバレは後半の方に記載しますので、まだ読んでいない方は「ネタバレ注意」でページを閉じてください。

では、いってみましょう。

朝井リョウ先生

まず、著者の朝井リョウ先生についてまとめます。

Wikipediaから引用します。

朝井 リョウ(あさい リョウ、男性、1989年5月31日 – )は、日本の小説家、ラジオパーソナリティ。22013年、『何者』で第148回直樹三十五賞受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少(23歳)である。

とのことです。

AIに朝井リョウ先生の作品数を聞いてみたら、単著で30作品弱、共著含めると30品以上の作品があるようで、作品一覧をみましたが・・・・・すみません、無知で・・・。

人気・売れ筋ランキングも調べましたが、信憑性のあるサイトにたどり着けず、複数のサイトをみてこれかなぁと思ったのが、正欲とイン・ザ・メガチャーチでした。

ラジオに出演している時の番組を拝聴しましたが、作品の繊細さをあまり感じさせない印象を受けたのは吃驚しました。

「正欲」 概要

では、「正欲」の背表紙を引用します。

自分が想像できる”多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな。息子が不登校になった検事・敬喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、”多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない。希薄の長編小説。

なかなか攻撃的な文書ですよね。

本編512ページありますので、たしかに長編小説の部類にはいるんでしょうね。

内容が内容だけに、512ページは長かった・・・・。

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感想(ネタバレなし)

複数の登場人物が、それぞれのストーリーで順次話がすすみます。

小説のテーマが銘打たれ、その流れに沿って、それぞれのストーリーが進んでいきます。

最初は関連性がないように見えるそれぞれのストーリーですが、徐々に関連し合う手法は圧巻。

次のストーリーへ繋げる際に、前ストーリーの最後の内容と、次のストーリーの冒頭の表現に類似性をもたせる遊び心は、脱帽ものです。感心しました。

多様性の社会実現にむけ、現実世界でも様々な発言や法整備がなされていますが、果たして多様性の本質を本当に理解し、「多様性社会」を作り上げようとしているのか、現実の厳しさと「本当」のマイノリティの苦しみ、そして「正しいこととはなんなのか」を投げかける、風刺がきいてさらに痛烈に問題提起を指摘する内容だったと思います。

実際に、読後は「多様性社会とは何なのか」を改めて考えさせられました。

難しい課題ですよね。

世の中に「絶対」はありませんので、「絶対的」な正義も存在しないと思います。

そうした場合、「多様性」を考える場合、どこまでを「多様性」として許容し、どこからが「排除」されるのか、そして「排除」は民意と多数を言い訳とした身勝手なルールではないのか、と答え無き課題を突きつけられた気がします。

難しいですね・・・。

私自身、かなり斜に構えた性格なので、尚更考えさせられた本でした。

イン・ザ・メガチャーチも読んでみたいのですが、いまのモチベーションで読めるか不安です。

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感想(ネタバレ)

では、ネタバレの感想です。ちょっと行をあけます。

ネタバレを避けたい方は、この先は読まないようにしてください。

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では、ネタバレ感想です。

いやぁ、なかなか大変でした。

考えさせられる内容である点もそうですが、マイノリティを極端な例を用いて表現する手法は、受け入れるのに時間がかかりました。

夏月や佳道、大也の性癖が「水」(もう少し対象は複雑ですが、「水」とさせてください)という点は例示として考えたものの、現実性を見いだせず、没入感を阻害する要因となりました。

でも、本当にこうした性癖を持っている人がいる可能性は否定できないんでしょうね。

否定すると、まさに後半指摘された「多能性の無理解」になるので、気をつけないといけないと思いました。

本でも触れていましたが、たしかに「○○フェチ」みないな話は日常的にもよく聞きますので、その延長線上で、想像するのが困難なフェティズムは存在するんでしょうね。

ただ、本当に難しい課題ですよね。

たまたま「水」の性癖は、理解が得られないだけで、法に触れる可能性は極めて低く、「繋がり」を得られる仲間がいるのであれば、なんとか生きて行ける可能性はあると思います。

ただ、小児愛好家のように、現行法ではタブーとされる性癖は、マイノリティとして受け入れる対象とはならず、排除の対象となります。

子を持つ父親としても、小児愛好家を擁護するつもりは更々無く、むしろ糾弾の対象としていますが、「多様性」や「マイノリティ」を考えた場合、絶対多数の人間が定めた「法」や「倫理」を押しつけて糾弾することが、果たして正しいことなのか、考えさせられてしまいます。

個人的には、社会秩序を維持するためには、「正しい」ではなく「秩序維持の為に多数の意見で合意したルール」は、必要な「手段」だと考えます。

そうすると、マイノリティは「許容」や「理解」から、「排除」となってしまうので、その社会矛盾を常に認識しながら、生きていくことになるんでしょうね。

ただ、「他者理解」の努力はしたいものです。

登場人物やストーリー展開は、正直言ってきつかったです。

特に、昭和的なおじさんの代表として表現された敬喜や、おせっかいの象徴として描かれた八重子は、まぁ読んでて辛かった。

そういった点では、朝井リョウ先生の表現力が長けていたということですね。

ただ、敬喜に関しては、徐々に膠着している個の思想・信条が瓦解し、妻との関係(セックスの時に目から涙が流れる→そのことに興奮するようになる)を冷静に分析しはじめて、さらに理解がすすみそうになる点は、興味ある展開でした。

ただ、八重子はあかん。

話さないと相互理解もすすまない点はたしかに正論ではあるが、大也がいうとおり、話せば必ず相互理解が得られるとも限らない。

今回は性癖の問題での話ではあるが、他の課題でも理解が得られにくい考え方や事象でも「話してもらわないとわかりあえない」などと、押しつけがましく言う人はいる。そうした人の象徴が八重子なんでしょうね。

まぁ、かくいう私も、半生を振り返れば、同じような態度を取った気もします。反省。

敬喜が夏月に佳道のことを説明するくだりは、本当に悲しいですね。

表現は正確ではないかもしれませんが、小児愛好家を否定する佳道等に対して、「子ども以外、例えば遊具に興奮していたなどありえない」と断罪したあと、夏月が「ほれみたことか」と「理解が得られないこと」を嘆くのではなく、それを通り越して諦めの境地にいたっているのは、マイノリティの苦しさを見事に描写していますね。

まぁ、色々と考えさせられた話でしたが、読後は全くもってすっきりしません(涙)。

イヤミス系に分類してもいいんじゃないでしょうか。

私はイヤミス系は嫌いです。

あぁ、イン・ザ・メガチャーチ読みたかったんだけれどもなぁ。

もし、正欲とイン・ザ・メガチャーチの両方を読んだ方いましたら、ぜひイン・ザ・メガチャーチを読むべきかアドバイスをお願いします。

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